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『部屋の片隅で』

「なんで……!」
目を真っ赤に腫らした君が声を荒げる。
そんな君とは対照的に涙の一粒も出ない僕は、正しい返答すらわからないままだ。
「なんで私を見てくれないの……!!」
それは物理的にか、それとも心理的なものなのか。
そんなことを考えながらも、まだ僕の瞳は君の向こうの白い壁を映したままだ。
「…ごめんね」
最適解かと思ったその言葉は君の怒りをより燃やすだけで。
悲鳴に近いような泣き声をあげた君が、僕の腕を壁に押し付けた。
抵抗なんてする気もなく、触れたところから伝わる熱さと怒りを受け止める。
「私が好きなの、ばかみたいじゃん」
震えた声に湧き上がる言葉も、さっきと同じ謝罪の言葉だ。
それが申し訳なくて、情けなくて、それでも最良の選択肢を見つけられない。
どうしようもなく冷たい部屋の片隅で、はじめて君の目を見つめた。

彼氏くんがクズなのか、彼女ちゃんがヘラなのか。迷うところですね。

12/7/2024, 10:17:21 AM