過去に囚われているような気がしていた。
もう別れたのに、他人なのに、別々の人生を歩もうと決めたのに、俺はいつまでも恋人を追い続けている。それが幻影であると分かりながら、美しい輪郭を掴みたいと願ってしまう。まったく愚かだ。
「ただいま」と口に出したのは、あいつの声がまた聞きたかったからだろうか。潜在的な癖に支配されているかもしれない。どちらにせよ、誰も居ない空間からは勿論「おかえりなさい」は聞こえてこなかった。
「そら」
思わず呟いた。そのとき、俺は気がついてしまった。あぁ、俺は、あいつの名前すらまともに呼んでやらなかったんだな。いっそのこと首かっ切って死ねたら良いのにな。
十七作目「今を生きる」
二日すっ飛ばしましたが、変わらず生きております。曖昧です。
いつまでも過去と決別できない。二人だけの、恋がしたいから。
7/20/2025, 10:57:49 AM