瑞葵

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あれはいつ頃だったか。確か姉が高校生の時だから、小4か。あの頃の我が家は荒れていた。不良になった姉、それに怒る父、ヒステリックな母。家がそんな感じだから我儘はなるべく言わなかった。僕はまだ幼かったからなにも出来なかったが、なにかしないと崩れてしまいそうな、そんな家だった。
その頃、僕はサンタさんは両親だと知っていた。だけどまだ夢見ていたかった。それに、自分から両親にそれを伝えてしまうとプレゼントがもらえなくなる気がして、言えずにいた。僕まで両親の逆鱗に触れてしまいそうで怖かった。だから、少し変わったプレゼントを頼んだ。
キャンドルだ。
格好いいやつとか、いい香りのやつとか、色んな種類があってもともと気になっていた。本当はサッカーボールが欲しかったけど。流行りのゲーム機が欲しかったけど。我慢した。当時の気持ちを思い出すことはもう出来ない。
だがこれはただの予想に過ぎないが、僕はかまってほしかったのじゃないか?友達にクリスマスプレゼントを聞かれたら「キャンドル」と答える。一目置かれるだろう。家で両親は姉ばかり気にかけるから、近所のうわさ話も姉のことばかりだから。とにかくかまってほしかったのだろうね。
結果、両親は本当にキャンドルをくれた。友達に変わり者と呼ばれるようになって、孤立した。近所のうわさ話には僕どころか姉の話題すら上がらなくなった。
僕は本当に馬鹿なことをした。1年に一回のプレゼント。大してほしくもないキャンドル。変わらない、むしろ悪化した関係。本当にただの馬鹿だ。その気持が今でも一番強い。馬鹿だよな。


_キャンドル_

11/19/2022, 3:25:48 PM