しらべ

Open App

神様が舞い降りてきて、こう言った。

「君はこれを何だと思う?」

_______

相変わらずの曇天にため息をつく。
あの時アイツが置いていったペンは相変わらず自分の手元にある。
なーんの変哲もない、ただのペン。
最近インクの出が悪くなってきたから捨てようかとまで思い始めている。

ペンはペンだろ。

そう思いながら筆を走らせる。
一週間も仕事を休めば溜まるものも溜まってしまう。これもあれも全部アイツのせいだ。
眠気を誤魔化すように眉間を抑える。
その時、扉の音がした。

「ただいま戻りました。」

「あーい。」

書類の山を退けると、部下が書類片手にこちらに向かってきていた。

「これ確認お願いします。」

「ん。」

「ではお疲れ様です。」

渡された書類に目を通す。これぐらいPDFで寄越せよ。
書類を山に載せようと顔を上げると部下の去る姿が見えた。
ふと違和感を感じ、立ち上がって部下に近寄る。

「え、何です?」

こちらを向いた部下のシャツを捲り上げる。

こっちじゃねぇな。

ぎゃーぎゃー喚く部下は無視して背中側も捲り上げると、どす黒い痣が出てきた。
ビンゴだ。

「お前これどした。」

バレたくなかったのか、部下が苦い顔をする。

「殴られました。」

「は?」

「あちらさんちょっと今日機嫌悪かったっぽくて。あ、仕事は出来ます、します。あんま気にし…」

言葉を探す部下の両肩を掴む。

「よくやった!」

「え?」

痣を連写し、棚から訴状を取り出す。

「いや前からあそこのやり方気に食わなかったんだよなお前今から病院行って診断書取ってこい」

「っ…と…?」

「勝訴確定演出だ」


す、とアイツから貰ったペンをとる。


「ペンは剣よりも強し、ってな。」

_________
2024.7.28°

ペンは剣よりも強し(広義)

7/27/2024, 6:04:10 PM