茎わかめ

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モノクロ
2025/09/30 『カーテン』の続きかもしれないものです。

 白黒とモノクロは、正確には違うものらしい。モノクロは単一の色で表示されているもののことで、白黒であるとは限らないそうだ。

 尊敬、だろうか。憧れかもしれない。もしくは、羨望? どれもが違うようで、どれもが己の欲に紐づいていた。長所は短所、表裏一体とはよく言ったものである。
 己の欲は、先輩へと向いていた。自分にも人間の三大欲求は当然のようにそこにあったが、先輩の為ならば全て捨てられる。
 その感情に名前はなかったが、無いことがトクベツに思えてしかたなかった。

 きっかけは高三の春。入学式が終わった後。忘れ物を教室に撮りに行ったとき。たったそれだけだった。
 一番後ろの飛び出た席に座っている先輩が目に入った。一目惚れだった。恋愛感情ではないと言い切れるのに、恋に堕ちたのだと思った。地獄も恋も、堕ちるのは一瞬だった。

 先輩はいつだって美しい。先輩が居る場所は、地獄だって天国だから。それはなんだか、モノクロ写真に似ているなと思うのだ。
 彩度と明度のみが残り、色相だけが失われる。一色を残して表されるそれは、自分にはとても美しいものに見えた。

9/30/2025, 9:38:38 AM