セイ

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【落下】

ふと目を覚ますと、僕は自分が良く知った場所にいた。

高校の美術室。僕の青春の1ページだった思い出の場所。

僕はゆっくり立ち上がると校舎を彷徨いた。

ピカピカだった校舎も今ではすっかりボロボロになってしまった。
窓ガラスは殆ど割れ、床や天井には数え切れないぐらいの穴が空き、壁は落書きだらけ。
動物小屋も柵は腐り果て、飼っていた動物たちは何処かへ消えた。
あの頃の思い出の校舎は見る影もない。

あっという間に回り終わった僕は最後の場所である屋上に着いた。
僕の足は自然にいつもの定位置に向かった。
定位置に着いたら5,6回深呼吸をする。何度やったか分からない儀式だ。

「あーあ、こうなるならあの時飛ばなきゃ良かった」

何度口にしたか分からない言葉を紡ぎながら今日も僕の身体は落下し続ける。

己に課された「罪」という名の鎖を断ち切るその日まで。

6/18/2024, 2:25:10 PM