ゆかぽんたす

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好きな人がクラスの女子に告白されていた。私はたまたま教室の前を通っただけで、それが告白なのか確証はないのだけど、多分あれはそうだと思う。夕陽のせいかもしれないけど、女の子は頬を染めながらはにかんでいたから。そして彼の方も笑っていた。至極嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに頭をかきながら。たった4秒間しか見なかったけど、その僅かな時間だけでも2人の間に柔らかな雰囲気が漂っているのが分かってしまった。

おめでとう。お幸せに。
負け惜しみではない。心の底から思ってるわけでもない。定型句のような感覚で頭の中で生み出された言葉だった。けれど次の瞬間ずんと心が重くなる。現実を受け入れたせいだ。
私のほうが早く行動していたらもしかしたら何かが変わっていたのかな、とか、どうにもならない想像をして傷つくのをやめたい。自分ばっかり被害者の気持ちになっている。こんなの惨めすぎる。

まだ2人は教室に居るのだろうか。居たら何だと言うんだ、自分には関係ないではないか。2人の私が頭の中で闘っていた。なんとかやり過ごしつつ昇降口を出た。秋の風はひんやりしている。花壇でも何でもないところに、秋桜がひっそり咲いていた。誰も手入れしてるわけでもないのに僅かな群れをなしている。風に吹かれて可憐なピンクの花が揺れていた。あと少し風が強くなったら負けてしまいそうなほど華奢なのに、ぐんと上に向かって伸びている。最盛期はもうすぐ終わってしまうのに、どこまでも高く伸びようとする姿に目が惹かれた。乙女の恋心なんて可愛い花言葉のくせに実際はか弱くなんかない。今を精いっぱい生きている。
私もこんなふうになれたなら。右手を空に向かって伸ばしてみた。高く高く、秋桜が伸びてゆくように突き出してみる。不思議とさっきまでのモヤモヤは消えていた。

明日からまた頑張れそうな気がする。
私の最盛期はまだ訪れていないんだから。
きっと、もう少し頑張れるはず。

10/15/2023, 9:59:00 AM