とある恋人たちの日常。

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 ぎゅっと締め付けられて息苦しい。
 実際に息ができないわけじゃないけど、呼吸が浅くて辛いんだ。
 
 視線の先に光るものが見える。
 それでここが暗い場所なんだと気がつけた。
 
 重い足を奮い立たせて光の方へ歩いていく。
 息も絶え絶えになってきたけど、近づきつつある光を希望に前へ進んでいた。
 
 どれくらい時間が経ったか分からない。
 終わる気がしなかったけれど、ちょっとずつ歩いて行ってなんとか光にたどり着いた。
 
 思ったより小さい光なのに強い。
 その光に手を伸ばして指先が触れると中に心情が浮かぶ。
 
 守りたい子がいるんだ。
 その子の表情がクルクル変わっていて目を奪われる。なにより彼女の笑顔が頭から離れない。
 
 見ないようにしていたのに。
 気が付かないようにしていたのに。
 
 俺はその『光』から目が離せなくなった。
 
 もう、気が付かないようにするのなんて無理だ。
 俺は彼女が好きなんだ。
 
 そうやって認めてしまうと、簡単で。
 光が広がって、世界に彩りがよみがえっていく。
 
 空気も変わり、重かった身体も心も軽くなっていった。
 
――
 
 目を覚ますといつもの天井で。
 ゆっくりと身体を起こすと、さっきまでのことが夢だったと理解した。
 
 夢で気がついた気持ちを思い出し、彼女の笑顔を脳裏に浮かべると胸が温かいんだ。
 
 
 
おわり
 
 
 
四七〇、心の中の風景は

8/29/2025, 2:25:07 PM