踊りませんか?
フロアには優雅な音楽が流れ
人々は思い思いに談笑している
貴族の社交場はきらびやかでいて
みな腹の中を読み合っている
だから来たくなかったんだ
遠巻きから送られる値踏みするような視線
下心見え見えの挨拶をしてくる人々
そんなものから逃げるように
人気のないバルコニーに出る
おどろいたことに
先客がいた
年の頃も自分と同じくらい
彼女もまた
親に言われるままこの舞踏会に参加し
貴族たちの腹の読み合いに疲れたクチだろう
だからだろうか
つまらなさそうに空を見る彼女に興味が沸いた
「よろしければ、僕と踊りませんか?」
思わず声をかけていた
彼女は驚いていたが
嫌がらずに手を差し出してくれた
部屋の中から漏れてくる微かな音色に合わせて
君と僕は人知れずステップを踏んだ
10/4/2023, 3:29:56 PM