"平穏な日常"
診察室で昼食を済ませた後、ボールペンのインクを取りに居室の扉を開ける。
「みゃあん」
扉を開けると、小さな鳴き声で俺の入室を許可する。
──ここ俺の部屋なんだけど。お前の許可なんて無くても入るけど。
ハナのご飯皿は既に空っぽで、窓辺に座って昼食後の日向ぼっこをしている。
卓上棚の引き出しからボールペンのインクを一つ取り出し、ご飯皿も手に取って退室しようと扉に近付く。
ふと振り返って窓辺のハナを見る。
気持ち良さそうに目を細めている様に、そこだけ時間がゆっくり流れているような感覚になる。
──ハナや街の人達が、こんな風に時間を長く過ごせるといいな。
目を細めながら廊下に出て、日向ぼっこ中のハナを邪魔しないよう小声で「じゃ、また行ってくるな」と言うとハナはその体勢のまま「みゃあう」と、間伸びした声で返事をした。
ふ、と小さな笑みを漏らしながら扉を静かに閉めた。
3/11/2024, 11:34:27 AM