かっぱー

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この学校には1つ有名な怪談がある。毎年行われる文化祭の時にソレは現れる。ソレは、クライマックスのフォークダンスを1人で眺めていると声をかけてくる。「踊りませんか?」と。それもその人の好みの姿で。自分好みの相手が目の前で踊ろうと提案してくる。そんな存在がいるわけないと頭の片隅で思ってはいても、この誘惑に抗うことはなかなか難しい。しかし、1度頷いてしまったが最後、二度と踊りを止めることができなくなってしまう。最初は何ら問題ない。自分にとっての理想の相手と楽しく踊れるのだ。これ以上ないくらい幸せな体験だろう。しかし、曲が終わると違和感に気づくことになる。ソレは手を話してくれないのだ。そして自分の足も止まろうとしてくれない。そのまま次の曲、さらに次の曲とノンストップで踊り続けることになる。
そして、全てが終わった時、周囲も違和感に気がつくことになる。そこには1人で踊り続けている奇妙な存在がいるからだ。しかし干渉しようにもどうすることも出来ない。そして踊っていた人はそのまま踊っていくうちに段々と生気を失っていきついには命を落としてしまう。
そんなに危険ならフォークダンスを無くせばいいと考えるかもしれない。しかし、1度無くした年には大きな事故が起こって何人かの生徒が大怪我をしてしまった。だから無くすこともできず続けているのだ。代わりに一つだけ良いことがある。死なないためとはいえペアを組んで踊る男女が多く、そこからカップルが成立することが多々ある事だ。いわゆる吊り橋効果というやつである。それでもそう上手くいかない人もいるわけで…毎年踊る相手すらいない幾人かの男子たちは涙を飲むことになる。
そんな私はどうなのかって?私は生きるのに疲れてしまった、それが答えだ。

10/4/2024, 12:43:21 PM