:たくさんの思い出
片付けができない。やり方が分からない。
片付けようと物を手に取って、どうしていいか分からなくなって、同じ位置に戻した。
「いやいや、だから片付けるんだってば」
と首を振って、また手に取って、またどうしていいか分からなくなって、泣きそうになって、また同じ位置に戻した。何をしているのか、何がしたいのか、自分でもよく分からなくなった。
片付け方が分からない。本当に分からない。
いらないものは捨てた。45L袋に詰めまくって、7袋くらいできて、全部ゴミの日に出した。いるものだけが部屋に残っているはずなのに。部屋がぐちゃぐちゃ、物で溢れかえっている。片付ける場所がないのか、片付け方が分からないからなのか、それすら分からない。
まだ断捨離する必要があるのだろうか。
好きで集めていた鉛筆も、過去に貰った手紙の数々も、大事にしまっていた宝物という名のガラクタも、ゴミの数々も捨てた。とにかくなんでもいらないと思ってゴミ袋に突っ込んで捨てた。心を無にしたつもりもなく、本当にどうでもいいと思って捨てた。はずだ。
ここ数年で人から貰ったものを捨てるのは忍びなくて捨てられなかった。「どうかもう物をくれないでくれ。これ以上増やさないでくれ」と思った。鬱陶しい気持ちがしてイライラして泣きたくなった。人がせっかく渡してくれた物に対して「いらない」などと思い始めた心の狭さも感じて余計惨めな気持ちになった。
部屋にあるもの全て捨ててしまいたいと思っている。こだわりがあるわけでもない。できないのは罪悪感があるからと、捨て方が分からないから。取り敢えずとっているだけ、本の捨て方、時計の捨て方、邪魔な棚の捨て方、そういうのが分からなくて、ただ放置しているだけ。
たくさんの思い出がこの部屋にはあるはずで、物一つ一つにもあるはず、なんだと思う。でも本当にどうでもいい。なんの思い入れもないというと嘘になってしまうが、どれもこれも、この部屋にあるものには嫌な記憶ばかり染み付いているから、いっそ全て捨ててしまいたい。
捨て方が分からない。調べても分からない。理解できるほどの脳みそがない。頭が足りない。だからって綺麗に保っておく方法も分からない。やってみようにも何故だかすぐに部屋がぐちゃぐちゃになる。
片付けができない。昔から片付けなんて、ほとんどしたことがない。異様なことを言っている自覚はある。ゴミの捨て方も掃除の仕方も、ずっとよく分からなかった。
掃除機をかけないと埃がいつまでも溜まっていく一方だと、定期的に掃除しないと綺麗を保てないのだと、最近ようやく知った。
思い出通りのことをなぞっているばかりじゃ、きっと駄目なんだと、最近、ようやく、薄っすら、分かり始めたところだ。
だからって相変わらず何も知らない。
11/18/2024, 4:35:01 PM