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春恋


「ねぇ、君、この辺の中学出身なの?」

春風吹くみたいな、軽やかな声と。
ぱっと花が咲くみたいな、眩しい微笑みに。

僕は、一瞬で恋に落ちたんだ。

それからの僕は、君を直視出来なくて。
せっかくの会話も、目を逸らしての、たどたどしい感じになってしまう。

でも、春風の彼は、そんな様子を気にした風もなく、明るく話を振ってくれるから。

嬉しくて、胸が熱くなる。
思わず、胸を押さえて、俯いてしまう僕に。

「大丈夫?具合悪い?」

それに、大丈夫、と答えるので精一杯な僕を、君がじっと見つめてきているのが、気配でわかって。
僕はドキドキして、益々、顔が上げられない。

「ねぇー?顔見たいな、見せてよ」

なんて、君からのお願いに。
僕は躊躇うけど、そうしたら、顔を覗き込もうとしてくるから。
顔の近さに驚いて、僕は顔を上げた。

ぱちっ、と。
春風の彼と、僕の目が合う。

緊張で固まる僕に、何故か目を見開く君。

そして。

「俺、君のこと、もっと知りたいかも」

なんて、熱っぽい彼の声と表情に。
僕はただ、ドキドキしていた。


End

4/16/2025, 3:51:38 AM