8月31日。夏休み最終日に、地域にある比較的大きい神社で祭りが開催される。そこには出店が出てきたり、この地域独特の踊りを踊る。老若男女、誰もがこの楽しい祭りを楽しみにしている。私だってその1人だ。
そして、夏祭り当日。私は家の用事で少し遅れて祭りに参加した。今年もいつも通り人で賑わっていた。もう踊りも開催されているようで、子供や若者、他にお年寄りのおじいさんおばあさんも踊っていた。見てる人達もニコニコしていて、誰もが楽しげだった。その風景を見ていた私もいても立っても居られなくなり、すぐに踊りの輪に入った。うろ覚えで下手な踊りでさえ、誰も気にせず踊る。そんな雰囲気が私は大好きだった。
少しして、私は少し疲れ、出店で何か買おうとした。りんご飴、射的、焼きそば、金魚すくい、イカ焼き。美味しそうな物と楽しそうな物がズラッと並んでいる。私はりんご飴を買い、コンクリートの上に腰を下ろした。甘くて大きいりんご飴は、この祭りの中で1番人気だ。私はそれを頬張っていると、1人の男の子の声が耳に入る。
「あぁー!!お金がー!!!」
そういいながら男の子は本殿の横にある、森に繋がっている薄暗い道に入ろうとする。どうやら、お金がその道に転がっていってしまったようだ。そこを見ていた私は、その男の子に声をかける。
「ちょ、ちょっと待って!そこの僕!」
男の子は振り返る。その目には涙を浮かべていた。
「な、何....?お姉ちゃん、僕早く行かなきゃ....」
「僕、さっきお金落としてたでしょ?でも、こんな真っ暗のとこって怖くない?」
「そ、そりゃ怖いけど.....でも、それじゃお金が.....」
「それじゃ、お姉ちゃんが代わりに探してきてあげるよ。こんなとこ、行かせたくないしね。」
おそらく幼稚園児頃の年である子に、こんな所行かせるのは可哀想だと思った私は、男の子にこう声をかけた。
「え.....い、いいの.....?」
「うん、いいよ。だから僕は待ってて。すぐに探して戻ってくるからさ!」
「あ、ありがとう!お姉ちゃんいい人だね!」
「ふふ、ありがとう。じゃ、待っててね。」
「うん!」
よし。じゃあ早く見つけてあの子に渡してあげよう。そして、私は隅々まで探した。けど、中々見つからず、遂に行き止まりまで来てしまった。だが、そこには小さな祠とおそらく男の子のものであろう五百円玉がおちていた。
やっと見つけた。そう思い、私はその五百円玉を拾い、この不気味な森から出ていこうとした。が、しかし、その時に石につまづき、祠に手がつく。すぐに体制を戻し、私はすぐにその森から逃げた。.....手が触れた瞬間、何故か寒気がして、不気味に感じたからだ。そうして、私は元の場所へ戻った。
.....だが、そこはさっきまでと全く違った。あの時の騒がしさも、人も、勿論あの男の子もいなかったのだ。.....だが、その代わりに、1人の男が立っていた。それも奇妙な姿をしており、狐耳、しっぽ、真っ赤な目、真っ白な髪色。この世の者ではないみたいだ。
(え.....誰?っていうか、みんなは....?)
戸惑っていると、男がこちらを振り向き口を開く。
「.....迷い子?珍しい。あぁ、今日は縁日だったか。」
迷い子?私が?状況が読めずにいると....
「.....可哀想に。善行を行ったというのに、俺みたいなのに出会うなんて。」
「え.....?」
「まぁ、いいか。」
男は微笑み、次にこう言う。
「ようこそ。こっちの世界へ。」
7/29/2023, 4:52:07 AM