やなまか

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彼と家族になってはどうかと。
メルルがこの世界にたった一人になることを憂い、結婚を勧めたのは祖母だった。

祖母のなかでどんな変化があったのかは分からない。
分からないけど、人生で大きな転換期を自ら迎えることに怯えた。
「おばあ様。私、怖いんです」
「何を怖がるんだいおまえ。何も怖いことなんてありゃそんよ」
「でも…」
この世界での結婚は、民間人にとっては子供ができてからという地域も多い。王族貴族の金持ちとは違うのだ。出生死亡率も高く、大人になるまでに子が無事に生きられる保証はない。
「あの男はいい男さね」
「そうですね…」
祖母の目からみても、あの人はいい男のようだ。メルルは少しほっとする。
「男はね。同じ道を行きたいと思う男を選ぶんだ」
「同じ道…」
そう。どんな困難でも助け合い、生涯の果てを目指し同じ道を歩む相棒なのさ。一人で先に行くのも別の道に行くのもダメだという。
人にはあらかじめ決まった道筋がある。
他人と道が混じり、離れ、影響し合う。誰と行くか。どう困難を対処するか。それが方法だ。
「ごらんよこの空を」
周囲の明かりが消えた深夜。
秋の星々が天を彩っている。
「おばあ様…私、星読みは…」
星占いは専門外だ。風水師とも占星術とも違う。
「予め決まった運命がある。星は何百年経っても変わらずわたしらを見ている。それをどう読み解くかは、我々占い師の役目なんじゃないかね」
「おばあ様…」
メルルは夜風に当たりながら、目を凝らして自分の星を探した。



10/5/2023, 12:08:57 PM