「こぼれたアイスクリーム」
夏のアイスクリームは特別。
暑い中で食べるアイスクリームは溶けてこぼれて
しまいそうだ。手にこぼれ落ちたアイスはベタつく前に洗ってしまわないといけない。
あのアイスクリームの様に貴方の目からに涙がこぼれないように願っている。
いくらでも僕が拭ってあげますから。
暑く火照った貴方の顔から寂しさをなくしますから。
だから笑っていてください。
貴方の笑顔を大好きになったのはいつからでしょうか。気がついたらもう堕ちていた。
貴方の目の僕の姿が写っていたなら僕はそれで満足でした。
ある夏は友達と過ごし。ある夏は家族と過ごし。
またある夏は貴方と過ごした。
夏に食べるアイスクリームは特別に感じられた。
それをさらに貴方の横で笑いあいながら食べていると
思うと心がなんだか暖かいのに痛くて。
こんなにも心地のよい痛みは存在していたのか。と
初めて知ることもありました。こんなこと貴方に直接言いたかった。でも引かれたりしたら嫌だからなにも言えませんでした。
追記。貴方のアイスクリームをなめる姿は美しく儚げでどこか色っぽさがありました。僕の目にずっと
焼き付いて離れません。
「幸せな寝不足」
「心地のよい痛み」
たくさんの事を経験しました。
時には貴方の事を考えていて眠れない日もありました
貴方に釣り合わない僕を鏡越しに見るとやっぱり目の奥が痛くて、熱くて。布団にくるまる日もありました
夏は過ぎ秋になると貴方はどこか寂しげだった。
アイスクリームを食べました。夏の頃と同じでコンビニの前の駐車場に座ってアイスを食べました。
秋になっても暑くてアイスクリームはすぐに溶けていく。慣れたことなので手に垂れる前にすぐに食べ始めました。
でも僕のとなりに座った貴方の手からアイスクリームが伝って地面に垂れていきました。
どうしたのか。尋ねようとしたのですが貴方の顔を見ると泣いていました。
涙は頬を伝い手を伝い地面に堕ちていきました。
話を聞くと貴方はもうこの先命が長くないそうですね。未知の病気。治療法はなく、かかってしまうと
だんだん体が老いていって結果的に死に至る。
貴方はこのアイスクリームがこの人生最後のアイスに
なると思っていたのでしょう?
でもそれは間違えです。
貴方が病室にいても僕がアイスを届けますから。
秘密でも何でも。
今思うとあの病室で内緒で食べたアイスが一番おいしかった。
だからもう泣かないでいて。
お願いだから笑っていて。
貴女が眠ってからいくつか経った。
そんな今でも貴方の眠る墓の前で一緒に食べるアイスはとてもうまい。
ほら、貴方の分のアイスも買ってきた。
早く食べないと溶けてこぼれてしまうよ。
もうとっくに僕の目から涙はこぼれてしまったけれど。
塩っ辛いアイスを食べるのは一年に一回。
君の命日だ。
8/11/2025, 3:17:10 PM