※今回は創作小説ではなく、事実に基づいた日記です。
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あなたのもとへ行きたかった。
ずっと、あなたに追いつきたかった。
自慢じゃないが、私は成績トップだった。
しかし、運動がてんでダメだった。
それでもそれなりに人脈はあり、
多分、信頼関係もおかれていたと思う。
だけど私には到底、届かない人がいた。
それが、同じクラスの彼だった。
彼もまた、成績優秀者だった。
運動神経もよく、体力もある。
いつもずっと忙しなく動いている人だった。
友人はいるようだったが、
プライベートを大切にしているのか、
1人でいるところをよく見かけていた。
この学校は偏差値が低いところだから、
悪く言ってしまえば、馬鹿しかいない。
私もそのうちの1人。
しかし、こんな馬鹿な学校に
どうしてあんなに聡明な彼がいるのか、
不思議で仕方なかった。
私は彼のことが気になっていた。
気になっていた、というのは、読んで字の如くだ。
私は恋愛感情をイマイチ理解しきれないところがあるので
彼のことが好きかと言われても、何も答えられない。
基本的に教室はうるさい。
騒ぎ立てる。スピーカーで音を流す。熱唱する。
興味本位でdB数を測ってみたら、MAXが88とか。
工事現場に匹敵する騒音。
こんな空間だと、席から1歩も動かずに
静かにしていられる、というだけで貴重なのだ。
彼はあまり人と群れなかった。
でも、だからこそ、
なんだか近寄り難い雰囲気を感じてしまって
関わり方がわからなかった。
授業で一緒の班になった時は話せていた。
事務的な話しかしていなかったから。
だけど、個人的な話となると別だ。
最初の一歩。それが中々踏み出せなかった。
そんな日々が数ヶ月続いた。
クラス替えをした4月の当初から、気になってはいた。
けれど、なんだか人間が怖くて。
実際にマトモに話すことが出来たのは、
文化祭の準備をする期間。つまり、9月の終わりだった。
彼は物持ちが良かった。
彼が使っていた水筒には、
10年前のポケモンが描かれていた。
ちょうど、私たちの世代のポケモンだ。
私は今でもポケモンが好きなのだが、
こんな子供らしい趣味、馬鹿にされても
おかしくないと思ってしまって、
さりげなく聞いた。
「『まだ』ポケモン好きなの?」と。
すると彼はどうだ。
いざ蓋を開けてみれば、彼は対戦ガチ勢だったのだ。
私は対戦は一切せず、図鑑を集める方の人間だったので
正直、話にはあまりついていけなかったが、
ずっと仲良くしたいと思っていた彼と
曲がりなりにも共通の趣味があったことが
心の底から嬉しかった。
そこからはよく覚えていない。
彼のLINEを手に入れてからは、
よくLINE上で会話していた。
電話が苦手なのと同じ理論で、
私は口下手だけど文面にすると流暢な
タイプのコミュ障だったからだ。
だけど段々と、対面でも話せるようになってきて
いつしか、手に触れることも許してくれた。
それでも私はなんとなく、
彼との壁を感じてしまっていた。
「多大なる尊敬と嫉妬」
この言葉が似合う人だった。
でも彼は、私のことを「友達」だと言った。
私は驚いた。友達だったのか?って。
思えば私は友達かそうじゃないかの線引きも曖昧だ。
嬉しかった。
彼に認めてもらえること。
特別じゃなくてもいいから、私を私として
個として見てくれるのが堪らなく嬉しかった。
そんな彼のことをもっと知りたいと思って、
たくさん話をした。
そんな中でも、特に彼を尊敬しているところが、
自己肯定感が高いところだ。
私はある時、彼に聞いてみた。
どうしてこの学校に来たのかと。
すると彼は言った。
「家から1番近かったから」
私は唖然とした。
長年の疑問があっさりと解かれてしまった。
私は馬鹿な自分を変えたくて、
必死の思いでここに入学したっていうのに。
曰く、彼は馬鹿ではない。それは昔からのようだった。
家から近いからとここの学校を志願した時、
当時の先生から止められたようだ。
何故なら、偏差値的にもっといい所へ行けるから。
でも、彼は自分の意見を曲げなかった。
それが私には随分、猟奇的に見えた。
それを無しにも彼は、常に自分ファーストだ。
自分の時間を大切にする。人に振り回されない。
そして何より、自分で自分を肯定していた。
私は逆。地の底まで自己肯定感が低い。
結果を出せなかった自分を変えたくて、挽回した。
そのお陰で、私は成績優秀者になれた。
でも、自分を誇ることは出来なかった。
他人が見たら絶対に羨むような、
そんな素晴らしい結果を手に入れても、だ。
こればかりは性格なんだと思う。
だから、当分の目標は「自己肯定」だ。
私は彼のような、かっこいい人になりたい。
そしてら彼のような、強い信念を持ち、
自分の為に生きれる人になりたい。
その為にも私は、彼に興味がある。
心の内から湧き上がるこの探究心に支配されてゆく。
彼のことをもっと知りたい。
あなたのもとへ行きたかった。
だから、あなたのもとへ行った。
そうしたらどうだ。とても幸せだった。
彼は私のことを優しく肯定してくれた。
それがとても嬉しかった。
憧れ。
多大なる尊敬と嫉妬。
眠くなってきたので、そろそろ終いにします。
長文お連れ様でした。
1/15/2025, 5:11:12 PM