NoBody

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「ねぇ、今、どこにいんのさ」
電話の向こうからは、打ちよせる波の音と、君の息遣いが聞こえる。
「あのね、何度も言うけど、こっちは心配してるんだよ」
思ったより苛立った声になってしまって、自分でも驚いた。
「まあ、とりあえず、帰ってきてよ」
相変わらず、ただ、波の音と君の息遣い。
「ねえってば」
「…ごめん」
長いようで、短い沈黙のあと、君のか細い声が聞こえた。
私はスマホを耳からそっと離して、その場にへたれ込んだ。
「ねえ、春が来ちゃうよ」
まだほんのり白い息になって出た言葉は、君にはきっと、届かない。

_どこ?

3/19/2025, 11:59:07 AM