ほれぼれするほど美しく、透き通った歌。
船上に響き渡るその歌声はまさしく海の魔女と呼ぶにふさわしい。
皆の視線を釘付けにしている彼女は、人間ではない。
体つきこそ人間そっくりだが、背中から生えている色とりどりの花でできた羽根、猛禽類のような足……
そう、彼女はいわゆるセイレーンなのだ。
しかしこんな言い伝え……というか事実がある。
セイレーンが歌を歌うと船員は心を奪われ、瞬く間に船が沈んでしまうという事実が……
先ほど記したように、ここは船上だ。ならばなぜ彼女は歌っているのか?
その理由は……愛に生きるケンタウロスが彼女をほとんど無理やり連れ去って船に乗せ、しかもその船が海賊船でケンタウロスが捕まってしまい、助けるために仕方なく歌ったところ船員も船も大変な目に遭いかけて、騒ぎを知った船長が「俺様の気力で浮いてる船がセイレーンの歌で沈むわけねぇ!」と啖呵を切ったから……だ。
……わけがわからないと思うが、事実だ。
一応セイレーンは最後まで歌うのを躊躇していたことは明言しておこう……
そして僕はセイレーンとケンタウロスを追いかけてきただけの旅人。
なんだか凄いことに巻き込まれたが、まあこれも旅の醍醐味だ。
これで船が沈んで僕が海のもくずとなったとしても、最後にエレ、君が紡ぐ歌を間近で聴けて嬉しかったよ。
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元ネタは『聖剣◯説Legend Of Mana』より【ギルバート・愛の航海】です。
幼い頃は「ふーん」と思っていたセリフも今見たら中々深いことを言っていたりして発見が楽しいです。
一部ちょっと端折ったりセリフをほんの少し変更しているので、原文や話の流れが知りたい方は良かったらぜひ調べたり遊んだりしてみてください。
10/19/2025, 2:40:54 PM