るに

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可愛いのに可愛くないと言う。
好きなのに嫌いと言う。
みんなが想像する「あまのじゃく」とは
この事だろう。
しかし民間説話の妖怪でもある「天邪鬼」。
人に逆らう鬼だ。
今日はそんな天邪鬼の
ある少女のお話を。
その子は普通の人間の少女だった。
進んで村の手伝いをして
頼まれたら全てやり遂げ、
太陽のような笑顔を持つ
村の中心的存在。
しかし少女は
自分の気持ちを隠していた。
やりたくないと思ってもやり、
無理して笑う。
村の人々は少女の本当の気持ちを知らずに
毎日手伝いをお願いした。
この村を明るくしたい思いと
普通に暮らしたい思い。
心と心がぶつかり合ったある日、
少女の額に薄紅色のツノが生えた。
鋭く尖っていて
みな気持ち悪がった。
少女にあれだけ助けてもらったのに、だ。
少女は酷く落ち込んだ。
自分が我慢までしてやってきたことは
無駄だったのだと。
そして逃げたのだ。
深い森の奥へ。
そこは静かで誰もおらず
案外こんなもんなのだと
肩の荷が降りた。
それからというもの、
少女は人間の言うことを
聞かないようになった。
食べ物を盗み
森で暮らした。
何度か村の教会を襲ったので
天の邪魔をする鬼、
天邪鬼と名付けられた。
妖怪はそう長くは
人間の目が届く所にはいられない。
反抗者だったので
はぐれ者の妖怪だけが住む路地裏に
追いやられた。
蔦路地というここには
狐や狼、河童など
有名な妖怪から
マイナーな妖怪まで居た。
ここから出たいと思う者が多いらしいが
少女はちっとも出たくなかった。
自分で村をめちゃくちゃにしたくせに
化け物を見るような目で見られるのが
嫌だったのだ。
"Good Midnight!"
ここでは夜しか出歩かないという
暗黙のルールがある。
提灯などがぶら下がり
祭りのように賑やかになる夜のお供が
"Good Midnight!"
妖狐にこの賑やかな騒ぎっぷりは
居心地がいいどすなぁ?と言われ、
少女は首を振る。
しかし本心は
ここが私が私であれる最後の居場所だと
よくわかっていた。
前から吹く強い風は
止むことなくまだ吹き続ける。

12/12/2024, 4:07:40 PM