もんぷ

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「別れろよ。」
「むり、付き合ってないもん。」
鬼のようなLINEが入ってたから何かと思って来てみれば、またあのクズの話題。既に酔いが回っている彼女は机に頭を突っ伏していた。付き合ってないから別れないなんてどんな頓知だ。
「問い詰めたの?前に女といたこと。」
「うん…はぐらかされたけど。」
また一口グラスを煽るからそろそろ水にしろと自分のお冷を押し付ける。グラスを替えたことに気づかないほど酩酊状態ではないようだが素直に水を飲むようになった。
「大体さ、嘘つくの下手なんだよねあいつ…すぐ目泳ぐし、へらへらしてさぁ……でもさ、そんなあいつのペースにのまれてへたくそな嘘信じようとする自分がバカすぎてむり…」
ついには泣き出してしまった。もうこうなったら自分の声は耳に入らないだろう。瞼が重くなってきている彼女に黙って目をやる。早く縁を切ればいいのにと思う。さっさと別れて早く次を探せ。ドラマなんかだと自分がもらってやるみたいな流れがあるがそれは残念ながらできない。彼女はあくまで友達。自分とは違うところで幸せになってほしい友達。だから、自分はマスカラの滲んで黒くなった涙をおしぼりで優しく拭いて、閉店までの数時間を寝かせてあげることくらいしかできない。彼女のこの涙の跡が綺麗に消えて、真っ暗な闇から早く抜け出せますようにと願った。

3/29/2025, 2:37:17 PM