夢月夜

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『向かい合わせ』

向かい合わせで座った観覧車の中は、妙な緊張感が漂い静寂が包み込む。
目も合わせない二人。男性は外の夜景を眺めるも何かを考えている様子で、女性は何処を見ていいのか戸惑うように視線をさ迷わせている。

沈黙が流れて十分経った。この観覧車は一周するのに約三十分掛かる。それまでに動き出さないといけない。どちらも分かっているのに身体は思うように動いてはくれず、時間が経てば経つ程に気まずさも増してきてしまう。

このお膳立ては二人の親友達が作ってくれたもの。故に突然の事で心の準備はどちらも全く出来ていなくて。けれど、これが絶好のチャンスである事はよくわかっているのだ。
意を決して喉の奥から声を振り絞る。

「「あの!」」

顔を向けるなりソプラノとテノールの音が綺麗に重なり合う。お互い目を見開いたなら先にどうぞ、いえ其方からの譲り合いが始まってしまい話は一向に進まなくて。

そんなやり取りに同時に笑い出すと、緊張感漂う空気は穏やかなものへと変化を遂げる。微笑みあうと二人の声が再びぴったりと重なり合った。

「「貴方が好きです」」

8/25/2022, 2:41:19 PM