蓼 つづみ

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インクが乾く前に指先がためらいをにじませ、
うまく言葉に出来ない気持ちを何度も書き直した。

宛名は君へ向けたはずなのに、
どこかで「届かなくてもいい」と思っていた。

だから小さく折りたたんだ文字が、
紙の重さよりも、ずっと沈んで見えた。

封筒は、まだ言えない気持ちに封をした。

圧縮された心音みたいな手紙は、
届かない場所へ行きたがるのに、
静かに引き出しの奥にある。

誰にも読まれないまま、
伝えたかったことだけが
薄い紙の内側で密かに呼吸を続けている。

題 秘密の手紙

12/4/2025, 12:09:28 PM