星に包まれて 2025.12.30
まばゆい星空が刻まれる天球の中に、私はいた。
星という名の、数々の物語が刻み込まれていたその場所に。
そっと、青白く勢いよく輝く一等星に手を触れる。
力強い男だ。自信に満ち溢れ、これからの可能性に胸を躍らせる、まだまだ未来が明るい、若く、勢いのある物語を抱いている。抱いていた。
今度は反対側の、赤く巨大な星に触れた。若さの盛りを過ぎ、この皺と共に生き様を刻んできた雄々しい老年の男の生き様をみた。最後の輝きを探していた。
私は、一つ一つの物語に手を触れていった。悲しみに押し潰されてしまった星、助けを求めて叫ぶ星、そして、星の雲から現れる、生まれたばかりの、まだ世界を知らない星たちにも。
どれだけの時間が過ぎたのだろう。
たくさんの星の物語に触れてきた私の心の奥深くには、絶望と怒りと哀しみと、そして満たされた安らぎ。
星たちは全て、私の存在を受け入れていた。
私が、何のためにここにいるのかも。
私は、手にした星の紋様が刻まれたリュートを鳴らした。
じゃらん。
輝く闇のなかに、音が震え、揺らぎとなって、星たちを揺らす。
じゃらん。
もう一度星たちは震えた。自らが消えることの恐怖。そしてそれを受け入れる安らぎに、身を委ねている。
星たちは、灯火のようにふっと消えていった。
最後の星が溶けていったあと、私はほっと息をついた。
私の詩人として生きていた中で、もっとも重く、もっとも胸を締め付けられる弦の音。
それは私を包む星たちを、私のリュートで鎮めること。
最後に、私自身も消えること。
長く生きすぎた。これで私もようやく解放されるのだろう。
私はリュートの弦に手を掛けた。
じゃらん。
闇のなかに、リュートがひとつ。
そのリュートも、金の粉となって闇に溶けていった。
12/31/2025, 7:40:34 AM