満員電車に揺られて、身動きも取れない中シャッフルされた次の曲は、「悲愴」だった。耳がメロディを受け取った時、私の全身粟立った。
もう随分と遠くなった記憶の中にいる。
悲愴を弾くあの子の隣に私はいる。
放課後の音楽室は木漏れ日に照らされ、吹き込んでくる風がレースのカーテンを巻き上げた。私をピアノの音が包み、時間が止まればいいのにって思った。
できるなら今もあの場所に戻りたい。
こんな満員電車じゃなくて、あの穏やかでいられるあの空間に。もう何とも戦わなくていいあの時に戻れたらいいのに。
11/4/2024, 2:42:42 PM