翡翠のごとき肌、湿り気を帯びた瞳。
春日燈篭の中段にて鎮まり、じっとこちらを伺っていた。
おや、久しい
声をかけても、ひくりとも動く気配はない。
ただ、薄く瞬きをするのみで。
眼前に広がるこの庭園には、古から同じようなものが棲みついている。
雨の香を運ぶ頃に現れ、秋冷とともに姿を消す。
行く先は知らず、また訪れることも定められず
——さて、そなたは、あの子かな?
否、違うのであろう。
されど、こうして再び相見えたのだ。
それを“約束”と呼んでも、差し支えあるまい。
わたしが待つがゆえに、そなたが来るのではない。
そなたが誓うがゆえに、わたしがここに在るのでもない。
ただ、
───また会えた
その事実こそ世の理を超えて
繋がるものの証なのでしょう。
おかえり
そう言うと、翡翠の影はひとつ鳴き、青苔の陰へと、謐に消えた。
──────題.約束───
3/4/2025, 11:22:22 AM