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君と初めて出会ったのはあのひまわり畑。
飛んできた麦わら帽子を俺が拾い、君が後ろを向いて振り返って「ありがとう。」と言った時に恋に落ちた。
眩しい太陽の光を背に笑うあの長い黒髪と真っ白な肌が
俺の頭から離れない。
「……あなたも私と一緒に来る?」
その言葉の意味はわからないけど差し伸べられた手を俺は掴もうとした。
まあ、友人に声をかけられて結局は掴めなかったが。
だけど目を離した瞬間に君はいなくなってしまった。
残ったのは、拾った麦わら帽子だけ。
また夏が来たら、俺はあのひまわり畑へもう一度行く。
今度こそ君の手を掴むために。
もしかしたらあの手を掴んだら俺は二度とここに帰ることは出来ないのかもしれない。
でも、それでもいいのだ。彼女に会えるのならなんだっていい。
ああ、早く夏になれ。麦わら帽子を手に取り、彼女に思いを馳せる。


『麦わら帽子』

8/12/2023, 8:50:53 AM