時雨 天

Open App

病室




手術が終わり、入院1日目の夜。
気分が悪くなり、目が覚めてしまった。暗い病室の天井。
病院の夜は少し怖い。段々天井の模様が、得体の知れないモノに見えてきた気がする。
何も考えないようにしていると、手術痕に痛みが走る。
どうすることもできないので、強く目を瞑って寝ようとした時だ――
誰かに足を引っ張られた。下に向かって引っ張られるかのように。
怖くて目が開けられなかったし、確認をしたくもなかった。
ずりずりと下に引っ張られる感覚。でも、ベットから落ちる感じはない。
だが、ずっと引っ張られている。ずりずり、ずりずり、ずりずりと。
薄目を開けようと思ったが、やっぱり怖い。見たくないものを見る羽目になるのは嫌だ。
助けを呼ぼうと思っても、体が言うこと聞かない。――金縛りだ。
このまま、朝を来るのを待とうと思っていたが、ふとあることに気がついた。

「あ、ここの病院、初めて入院するから案内してほしいかも。お願いできますか……?」

小声でそう言った。すると、足が軽くなり、体も軽くなった。
少し周囲に警戒しながら、ゆっくりと上半身を起こした。

「……案内するのは嫌なのね」

思わず苦笑してしまった。あんだけ、アピールがあったのに。

「しばらく、入院が続くと思うけど、よろしくお願いします」

また小声で言った。次の日以降、金縛りも足を引っ張られることもなかった――
認めてくれたのだろうか?それとも――

8/2/2023, 1:54:54 PM