とある恋人たちの日常。

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「わっ!?」
 
 突然、恋人が背中に抱きついてきた。背中に頬を擦り寄せて柔らかい温もりに胸が高鳴ってしまう。
 
「この前は旅行、ありがとうございました。とっても楽しかったです」
 
 抱きしめながら、彼女は俺の手に自分の手を重ねる。すると手の中にころんと何かが転がった。
 
「なに?」
 
 何を渡されたのか覗いてみると、コルクで栓をされた小瓶だった。中には、砂浜の上に淡い色の貝殻と、渦を巻いた貝殻が転がっているように見えた。
 
「お土産です。この前の海でこっそり拾って作ってみました。可愛いでしょ」
「可愛い……」
 
 可愛いのは小瓶もそうだけれど、「手作りの思い出をお土産に作ってくれた」ことが、また可愛いと思ってしまった。
 
「連れて行ってくれたことが、楽しかったですし、嬉しかったので!」
 
 俺は彼女に振り返って、また強く抱き締めた。
 
 買ってくるお土産も良いけれど、こういうお土産も宝物になると胸が暖かくなった。
 
「ありがとうね」
 
 
 
おわり
 
 
 
一一二、貝殻

9/5/2024, 1:04:34 PM