回顧録

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習慣とは恐ろしいという話をします。

人に寝顔を見られたくない俺は、人前で寝られません。寝落ちてもちょっとの物音で起きてまうし、寝起きドッキリなんかも向いてないです。ドアガチャの音で目が覚めます。

でもあなたは知ってるでしょう。
例外があるということを。
なんてことはありません。若い頃、金もなくて一人一部屋なんて用意されてなかった俺たちはひとつのベッドで寝るしか無かっただけです。
それが毎日続いたので、睡魔に負けて寝るしかなかったからです。それだけです。そりゃ目の前で無防備に気持ちよさそうに寝てるあなたを見たら安心出来るってのもあったんでしょうけど、大した理由じゃありません。ただ、隣があなたやっただけです。他の誰が隣だとしてもいずれは眠れたでしょう。
別に特別じゃない。

でも頭がそれを勘違いして何を思ったのか、寝ているあなたが隣に居ればどんなに眠れない夜も眠れると解釈しはじめて、深酒したあと気ぃついたらおたくの家に居る、みたいなことが頻繁に発生しました。
お前もお前やぞ、アポ無しで来た奴をホイホイと家に入れんなや!ベッドを明け渡すな。じゃ、俺ソファーで寝るわとちゃうねん。お前がおらんと意味ないねん。

「お前の寝顔見に来たんやぞ、俺は」

目の前の顔が驚いたように目を見開く。
モノローグがつい言葉に出てしまった。
出てしまったものは仕方ない、とはいえ恥ずかしいは恥ずかしいので誤魔化すために言葉を連ねる。

「お前の寝顔みたら眠なれんねん。ええからはよ寝るぞ来いや」
「……あんた、寝られへんかったん?やから来たん?」
「そうや言うてるやろ、はよ隣で寝ろや」
「無茶苦茶言いはる……まだ俺は平気なん?」
「おかげで彼女の横でも寝られへんわ。なんでお前隣やってん」
「若い頃の話?そらあんたが俺隣おらんかったら機嫌損ねるからやんか」

今も損ねてはるけどと苦笑するコイツに決まりが悪くなって顔を背けた。

「やから隣に来たやんか、機嫌直してよ」

特別じゃないなんて言っておいて、最初から最後まで全部自分発信だった。こいつが隣にいる理由は俺がそう望んだからだ。

お前だけが特別だった。


『特別な存在』


作者の自我コーナー
いつもの
本当はもっと長かったんですけど、投稿せずに寝落ちしたらデータが飛んでしまって突貫工事で作り上げたものです。
心が折れましたね。3時投稿はやめようと思います。
グレてしまったので全くぼかしていません。

3/24/2024, 1:58:35 AM