堕なの。

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◤絆の連鎖◢

辛い記憶、衝撃的な場面が脳裏に焼き付くことはまあありがちで、それは私も例外ではなかった。

スローモーションで見えたその景色は私の記憶に影を落とした。その日の天気も、気温も、季節も、覚えていない。いつあったのかなど、調べればすぐに分かることで。でも何度調べたって忘れてしまう。それ程に強烈な景色だった。

二人の絆なんて甘い言葉に酔いしれたあの日々を鮮烈な朱に染めるその出来事は、連鎖するものだった。ずっとずっと、その闇に近づき続けた一年だった。

学校の屋上に立つ。フェンスの向こう側の開放感は心地よくて、少し怖いけれどあの日と同じなのだと考えれば特別恐れることもなかった。

目から零れるそれは確かな温度を持った雫だった。涙などではない、何の意味も持たない雫だ。それは意味を持ってはいけなかった。

トン

と地面を蹴って、身体を宙に投げ出す。空は血のような夕焼けだった。


テーマ:脳裏

11/9/2023, 12:16:36 PM