白糸馨月

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お題『カレンダー』

 パソコンのカレンダーを見ながら私は焦る。
 明日は推しの誕生日。深夜〇時をまわった瞬間に投稿して、波に乗らなければならない。
 だけど、推しのイラストはあと一歩のところだ。できるだけ時間をかけたくて二週間前から始めている。
 時折、残業と疲れに邪魔されながらあとは仕上げという段階に来ている。
 これまで道のりは平坦ではなかった。推しの顔がかわいく描けなくて何度も描き直したり、ポーズやらシチュエーションやらが描くのに高度な技術がいるし、背景まで描いているものだから自分で自分の首をしめているようなものだった。
 でも最高な推しの誕生日を祝いたいから、私も可能な限りこだわりたいのだ。推しに喜んでもらえるように。
 けれど時間は二十三時を回り始めている。塗り残しがないかどうか、ミリ単位で確認して文字もイラストから浮かないようにして無断転載対策にクレジットも邪魔にならないところにいれて、何度も何度も確認を重ねて投稿を待つだけになった。
 私はツイッターを開いて、今年の推しの誕生日タグと、イラストを添付して〇時を待つ。
 五、四、三、二、一……〇時になった瞬間に投稿ボタンをクリックした。
 タグを開くと私と同じことを考えているフォロイーさんの絵がたくさん目に飛び込んでくる。
 私の絵にもいいねとリツイートがされつつあって、ふと、ある通知に目が行って思わず口角があがる。
 推しがいいねのみならず、リツイートしてくれたのだ。
 私はよっしゃぁ! とガッツポーズして、いいね欄とリツイート欄にいる推しのアカウント画像をスクショした。

9/12/2024, 3:50:58 AM