どこ?
ねぇ、君はどこに行ってしまったの?
僕と同じベッドで眠る彼が、毎晩抜け出しているみたい。
僕は寝たフリをしているんだけど。
帰ってくるのは、僕が起きる少し前、慌ただしく、ベッドに入ってくるから、そんな風にされちゃったら、目が覚めちゃうよ。
……君が出て行ってからは、不安で眠れないから、どうしたって、僕の目は覚めているんだけど。
君が帰ってくるのが少し遅い日は、玄関が慌ただしくて、僕が平静を装って、そっちに向かえば。
「腹減って起きたから、コンビニ行ってきたんだよ」
そう言って笑う君の手に下げられた、コンビニ袋の中には、パンとコーヒーが2つ。
1つは僕の分だろうから、お腹が空いたなんて言う割には、少ない気がして。
なんで、そんな嘘吐くの?
とか、そんな言葉が喉に出かかるのを、必死で押し止めて。
まだ眠いフリをして、瞼を擦る僕。
君が帰ってきてくれた安心と、いつか離れて行ってしまうんじゃないかっていう不安で、目に涙が滲みそうになるのも、ついでに誤魔化すのだった。
そんな不安な夜が続いたある日。
バイト終わりに、僕が今晩の夕飯は何が良い?なんて、メッセージを彼に送れば。
今日は外で食べよう、ここに来て。
という、メッセージと地図が送られてくるから。
いつもと違う展開に、僕の胸はざわついて。
どうかしたの?
と、震える指先に気が付かないフリをして、メッセージを打つと。
大事な話がある、とか。
あぁ、ついに、君と僕の関係に終わりがくるのかな。
……そんなの、嫌だな。
なんて、思うのに、わかったと返事をする僕。
地図にかかれたお店に向かう僕は、溢れてくる涙を堪えるのに必死だった。
でも。
お店に着いて、先に席に座っていた君から告げられたのは。
「誕生日おめでとう。これからもよろしくね」
そう、口調こそいつも通りを装う君だけど。
その声は震えているし、笑顔が固いから、それが可笑しくて、僕は思わず笑ってしまった。
君が夜な夜な出掛けていたのは、僕に誕生日プレゼントの指輪を買う為に、夜勤のバイトをしていたかららしい。
なんだ、そうだったのか。
良かった。
僕の方こそ、これからもよろしくね。
End
3/19/2025, 10:29:20 PM