イオリ

Open App

入道雲

 部活からの帰り道。偶然会った7つ年下のそろばん塾帰りの弟とふたり、自転車を漕いで帰宅中。

 中学校の裏山の上に、モクモク、モクモク、白い雲。

 兄ちゃん、あの雲、めっちゃでかい。

 早く帰るぞ。雨降るから。

 なんでわかるの?
 
 あれはそういう雲なんだよ。雷も鳴るぞ。

 えぇ~。 スピードを上げた僕に必死でついてくる弟。

 なぁ、兄ちゃん。

 なんだ。

 ポンデリング食べたい。

 ポンデリング?なんで。

 なんとなく。

 んん、と少し考えて、

 じゃあそこのコンビニで買う。

 だめ。

 なんで。

 そこのポンデリング、白じゃない。

 いいだろ、白じゃなくても。

 ヤダ。白いポンデリング食べたい。

 なんでだよ。

 なんとなく。

 またも、んん、と考えて、

 じゃあミスドまで行くか。

 うん。 弟はスピードを上げ、隣に並んでくる。

 ほら、危ないから横来るなよ。後ろにいろよ。

 うん。 弟が素直に下がっていく。

 お母さんには内緒だからな。

 うん。

 頭の中で財布の中身を確認する。千円札があったはず。大丈夫だろう。

 なぁ兄ちゃん。

 なんだ。

 じいちゃんにも買ってく?

 だめだって。お母さんにばれるだろ。

 あ、そっか。

  
 全く。手間のかかる弟め。と心のなかで独り言ち。とは言うものの、ついつい甘やかしてしまう、年の離れた弟よ。

 そんな夏の日。

 
 

6/29/2024, 11:13:44 PM