街のシンボルと言われた大きな樹。
その下で今日も人は憩いのひと時を過ごしている。
「この樹はばぁばが生まれる前からあったんだよ」
「ばぁば、ほんと?」
「ほんと。ばぁばのお父さんとお母さんも、そのまたお父さんとお母さんが生まれた頃にはもう、この樹は今と同じくらいの大きさだったんだよ」
「すごいね!」
「ずっとずっと昔から、私達を見守ってくれているんだよ」
「ふぅん」
「この街が街になるよりもずっと前、まだ森や小川があって、野うさぎが跳ねてた頃からずっと見守ってくるているんだねえ」
「うさぎさんがいたんだ」
「多分ね」
「私が大きくなっても見守ってくれてるかな」
「そうだね。これからもずっと、この樹はここで私達を見守ってくれてると思うよ」
祖母と孫の言葉に応えるように、大きな樹の枝が風に揺れて音を立てる。
ざわざわ、ざわざわ。
葉と葉が擦れて鳴る音は、二人の言葉を肯定しているのか、否定しているのか分からない。
数百年後――。
その樹は変わらず青々とした葉を茂らせて、廃墟となった無人の街を見下ろしていた。
END
「これからも、ずっと」
4/8/2024, 3:06:29 PM