(星になる)(二次創作)
元より彼女を欲したのは自分の方で、何があっても手放すつもりはない。それは変わらないのだが。
「このままお前、いつかはミアレの星になるんやないか」
「ほひ?」
口いっぱいにサブレを放り込んだままおうむ返しするセイカに、カラスバは堪らず吹き出した。
セイカはMZ団の切り札にして、街の英雄である。暴走したプリズムタワーを治めた立役者であり、ミアレの高ランカーたちと軒並み深い絆を結んでいる。カラスバもそのうちの一人である。
単なる観光客であった彼女は、何を気に入ったのか、ミアレの街にすっかり居着いている。人助けをしたり、ロワイヤルに参加したりと気ままに暮らす彼女は、当然街の有名人であり、多くの人々に慕われていた。そう、まるでクリスマスツリーのてっぺんに輝く星のように。
「でも呼んだら来るし、呼ばんでも来るし、まあ脈アリか?」
「美味しいお菓子があるなら、どこにでも行きますよ」
にっこり笑うセイカは可愛らしく、ただ口元にサブレの滓が付いていた。
どこにでも、と言うが、彼女は呼ばれたらお菓子が無くても行く。かと思えば新しいポケモンを捕まえては鍛え、ロワイヤルでは敵なしと聞く。したいこともして、頼まれたこともして、毎日あちこち走り回っている彼女は、探そうと思えばすぐに見つけられた。
「なあ、ウチみたいな日陰モンと付き合ってたら、後ろ指指されるんやないの」
「試し行動ですか?カラスバさんにしては珍しい」
「試しやー判ってんなら、欲しい答えくれるんやろな?」
「私はカラスバさんが好きです」
「合格やな」
可愛らしい子にはご褒美を。傍で控えていたジプソに目配せすれば、香り華やかなローズティーが運ばれてくる。前にユカリから押し付けられたものだが、セイカを喜ばせる役には立ったようだ。
セイカの「好き」が、友愛なのか恋情なのかは測りかねるが、呼ばずとも来るという今の関係性を、カラスバはしばらく楽しむつもりだった。
12/14/2025, 12:05:32 PM