そっとしといてあげて欲しい。
戦争が生じ、鎮圧に向かった魔王は、血塗れになりながらも大戦争を終わらせた。
そっとしておいてほしい。そう魔王は思っていた。返り血を浴びた身体で、民たちに会いたくなかったから。
祝勝の凱旋には行きたくない。むしろ、静かな所で独りに、独りきりになりたいとすら思っている。
民たちに会うのは返り血を流しきってからのほうがいい。今の自分は鬼のように恐怖を与えてしまいかねないから。怯えさせたくは無い。
ゆえにこそ、魔王は独り、世界樹の所へと行った。そこで身体と心を癒やすために。
大戦争を振り返ってみる。英雄と呼ばれた勇者の一団を蹴散らせた。勇者の右腕を切り落とした。大戦争の首謀者である教皇の首を憤怒のままに斬り跳ねた。
そして、数多の生命を奪った。大戦争は聖戦と言う名目だったか。迷目と履き違えていたのでは無いだろうか。
いずれにしても、もはや魔王の領域内で戦争は起きないだろう。
大戦争の勝利は魔王側が手にしたのだから。
人間の領域など侵略する気はさらさら無い。だと言うのに、魔王と言うだけで人々は勝手に恐れている、こちらからすれば迷惑この上ないと言うのに。
細かい所は部下たちに任せよう。心や返り血を拭うことに今は専念しよう。
民たちとの平和な日常を歩むためにもーー。
1/15/2025, 9:54:47 AM