「透明な羽根」
私はまるで水面に映った一輪の花。
私を見下ろす貴方に近づこうとどう足掻いても、
完璧な貴方にはなれない。
だが貴方は私に言う。
君がいるからこそ僕が輝ける、と。
綺麗に写真に収めるには、
花だけでなく水面も映した方が良いと。
私はその言葉に涙をひとつ零し、
それと同時に水面に波紋が広がる。
続けてぽつりぽつりと水面が揺れる。
ただただ何も考えず、貴方の前で。
水面の花は波紋によって崩れた。
そして貴方は手を差し伸べる。
水面から私を引っ張り上げる。
浮かぶのに精一杯だった体が軽くなる。
私と貴方ははまるで恋人のように、
水面に映る私たちを見つめる。
【#189】
11/8/2025, 1:49:08 PM