ごめんなさい
散々迷惑をかけてしまって、人を傷付けてばかりいた
私利私欲の為にあなたがたを貪ってしまった
血肉を喰らわないと生命活動を存続できない、愚かな化物
僕は人間ではない、生まれたときからそうだ
この風貌や人格や欲求は呪いのようなもので、怪物たる僕の業だ
今更人間にもなれないので、せめて息をすることぐらい許してよ
仲間になれなくて、僕はずっと独りでした
昔は散る桜が雨みたいで好きでした
でも本物の雨は好きではなくて、だから茹だるような夏が好きでした
紅葉の秋も銀の冬も好きでした
ぜんぶぜんぶ、大好きだったよ、君のことも、好きだった
この崖をまっさかさまに落ちてゆけば、僕を認めてくれる
そうあなたがたが言ったので、言う通りに身を投げ出したはいいものの、さっきから打ち付けた頭が痛い
首も折れたみたいだし四肢や肋辺りの骨も砕けている気がする
酸素が薄いしここは臭いもきつくて死にそうだ
でも、ここから上に這い上がるのなら1時間もかからないかな
ともかくまずは腕が治癒するまで待とうと思って、とりあえず転がっている肉塊に接吻した
僕はこの肉体の不味さを、よく知っている
四十作目「仲間になれなくて」
9/8/2025, 1:38:24 PM