Karin

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「独占欲か」
月もてっぺんに上がりきり、やや傾きだしたかと思われる頃、隣に横たわる男がそう呟く
思わずうだるような体を上げて、声の方を見る
顔にかかるすこし長い前髪をなんとなく払いのけると、普通の人には珍しい青色の少し微睡むような緩んだ目だけがこちらを追ってきた
普段は左右に流してしっかり固めてる姿しかしてないので、本人の気が緩む姿はこんな時でもないと見れない
私以外の誰も見ることのない、見せたくない姿
それこそ
「今のあなたのように?」
「お前もな」
とからかってみると、珍しく気が昂ってるのか普段の姿には似つかわしくない冗談とも言える返事が返ってきた
なんとなくそれが可愛くてもっと見ていたいと顔に手を立てて髪を帷のように垂らして蔽いかぶさる
たくましい肉体はそれだけでもびくともしないが、普段は位置が逆なため多少不意をつかれたような顔をされた
「こうしていると」
さらに唇が触れるくらいまで顔を近づけ
「貴方が私の中に閉じ込められているみたい」
「閉じ込められるのも悪くはない」
そう返されこちらに手を伸ばされる
「だが、閉じ込める方がやはり興が乗る」
そのまま顔をつつみこむように固定され、唇を重ねられる
そのまま舌を絡め合い再び縺れ合う
恋と呼べるほど純真ではなく、愛と呼べるほど崇高なものではない この感情は醜い独占欲だ
肌を重ねあっても満たされない、それどころかますます欲しくなる
それでも、それがそれなりに心地よく思えるのは、それくらいお互いが互いをもとめあっているからなのかもしれない

6/4/2025, 5:52:12 PM