『三日月』
三日月が、こちらを見てニヤリと嗤っている。
流石、魔界だ。
どうやら、魔界の月は意思と感情があるらしい。
○○○
僕は虐められていた。
きっかけは、なんて事ないありふれた事。
クラスにいじめっ子と、いじめられっ子がいて、いじめられっ子を庇ったら、次のターゲットが僕になったってだけ。
独りぼっちの高校生活は、そこまで悪いものではなかった。
ただ、どうしても不満が一つだけあった。
――彼女が出来ない事だ。
僕には入院しているおばあちゃんがいる。
たいそう僕を可愛がってくれた大事なおばあちゃんで、僕に彼女が居ないことを随分と気にしていた。
さすがに、ひ孫……とまではいかないが、せめて彼女を作って、おばあちゃんを安心させてあげたい。
だが、僕が高校生活で彼女を作るのは至難の業になるだろう。
そんなときだった。
古びた骨董市で、奇妙な魔術書を見つけた。
何の素材で作られたか分からない和綴じの本、そこには古めかしい文字で魔界に行く呪文が書かれていた。
僕が躊躇したのは三秒。
それ以外に、僕を妨げるものは何もなかった。
○○○
三日月が可笑しそうにケタケタ嗤う中。
ふと、視界を影が覆う。
不思議に思って上を見上げると、伝承に出てくる悪魔のような姿の生物が上空からこちらを眺めていた。
「ニンゲン、ナゼ、ココニイル??」
「彼女を作りに来ました」
「…………ハ?」
「僕の彼女になりませんか」
「…………」
僕が大絶賛アピールをすると、悪魔は何か持病でも患っているのか頭を抱えて無言になってしまった。
「大丈夫ですか!? 僕は体調不良の方を気遣える優しさがあります! 彼氏にどうですか!?」
「モウ……シャベルナヨ、オマエ」
○○○
これが、魔界一の可笑しなニンゲンと呼ばれた僕と、そんな僕の側でサポートという尻拭いをさせられた悪魔の出会いだった。
ここから、僕らは魔界を旅することになる。
悪魔は、魔界に起きている問題を解決するために。
僕は、彼女をつくるため。そう、その悪魔を手伝って魔界の問題を解決して、なお魔界の方から好感度を稼いで、僕の彼女になってくれる人を見つけるのだ。
「いやぁ、頑張ったんですけど、今回も僕の彼女になってくれるって人は居ませんでしたねぇ……」
「オマエ、アタマオカシイ、アキラメロ」
「いや! 僕は絶対に諦めませんよ! さあ、次の困っている方々の所に行きましょう!」
「……ハァ、コノシゴト、ヤメタイ」
おわり
1/9/2026, 11:27:38 PM