甘酸っぱさは、儚いもので。
あなたとの蜜月の時間は、きっともう終わりを告げたのでしょう。
素っ気なくなったメールの返信も、断られるようになったデートの誘いも、あなたが他の誰かと仲睦まじそうに話しているその光景も、その全てが私の心をしんと冷たくするのでした。
あなたは大嘘つき。
それとも、ずっとずっと愛してるなんて、そんな浮わついた言葉を、信じた私が馬鹿なのでしょうか。
二人を繋ぐ“糸”が冷えきっていたことは、互いに理解しているはずですが、それでも、そんな糸でも完全に切ってしまうのは惜しくて、宙ぶらりんのままグズグズと繋がっているのでした。
「好きだよ」
黄昏の町の中を、手も繋がずに二人で歩いている時でした。
突然だったので虚を突かれましたが、しかし、その言葉が紙のように薄くて脆いもので出来たハリボテだと分かっていたので、私の心は少しも明るくなりませんでした。
あなたが昨日、幸せそうに笑いかけていたあの人の顔を、私は忘れていませんでした。
ここが境界線だと、私はそう思いました。
今、あなたを拒絶してしまえば、この黄昏のような私達の関係は、遂に切れてしまう。
それが、一番潔いと思いました。
なので、私は。
「嬉しいよ」
日が沈み行く。
太陽のかわりに昇る月は、まるで未練がましい私のようでした。
『たそがれ』
10/1/2024, 11:21:21 PM