蜜柑

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「何をしているの?」空を見上げて手を合わせる友人にそう尋ねる。友人はこちらを見て、恥ずかしそうに笑って言った。「いつか、どこかで亡くなった方に、ゆっくりお眠り下さいって思ってたの」ほら、人知れず亡くなってしまった方がさ、誰にも想われないのは悲しいじゃん。友人はまた空を見上げて続けた。「もちろん、誰かに知られて亡くなった方もいらっしゃるだろうけど。でも、遥か昔に亡くなった方は、きっとその誰かも今は存在していないだろうから」だから、どんな人が亡くなったかは知らなくても、手を合わせたいなって。そう告げた友人の瞳は、悲しげなものだった。……そしてどこか、寂しげなものだった。「……なら、私もしようかな」「……うん! 一緒に手を合わせよう」そうして訪れる沈黙の合間。私は手を合わせた。「(……どうか、安らかに。ゆっくりお眠り下さい)」きっと、誰一人欠けては、今の私もいないだろうから。その感謝も込めながら。

4/3/2025, 9:47:31 AM