海月

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「 行かないで。」

※ 今までの小説の 彼side を書いてみました。

別れを告げられた瞬間、頭が真っ白になった。彼女が突然「別れよう」と言った理由が、まるで理解できなかった。俺たちは両思いだったはずだ。確かに最近、彼女が元気がないことには気づいていたけれど、原因が何なのか聞いても答えてくれなかった。それでも、二人で乗り越えられると信じていた。

それからしばらく、何も手につかなかった。教室にいても、友達と話していても、彼女のことが頭から離れない。どうしてこんなことになったんだろう? 何度も彼女にLINEを送ろうとしたけれど、送ったところで答えが返ってくるとは思えなかった。俺が悪かったのか、それとも他に理由があったのか、分からないまま時間だけが過ぎていった。

そんなある日、共通の友達にそれとなく別れの理由を聞いてみた。自分で直接彼女に聞けなかったのは、怖かったからだ。何か自分が大きな過ちを犯したんじゃないかという恐れがあった。でも、友達から聞かされた事実は、それ以上に辛かった。

「彼女さ、幼なじみの子とのことで悩んでたんだよ。お前に迷惑かけたくなかったってさ。」

その言葉を聞いた瞬間、悔しさと無力感が一気に押し寄せてきた。俺を巻き込みたくないから、彼女は1人でその苦しみを抱えていたのか。そんなこと、全然気づかなかった。彼女を幸せにできなかった自分を、心の底から恨んだ。もっと早く気づいていれば、もっと力になれたんじゃないか。俺は彼女にとって、ただの重荷だったのかもしれない。

でも、もう遅かった。彼女は俺から離れてしまった。手を伸ばしても、もう戻ることはできない。彼女の涙を、俺は拭ってやれなかった。

数ヶ月が過ぎ、少しずつ日常が戻りつつあった頃、俺に告白してくれた子がいた。彼女とは特別親しいわけではなかったけれど、明るくて優しい子だった。彼女の言葉に救われるような気がして、俺は彼女と付き合うことにした。

でも、付き合い始めた後も、どこか心が空っぽだった。彼女のことを大切に思いたいのに、心の奥底ではあの子――前の彼女のことが、どうしても忘れられなかった。新しい彼女は俺に笑顔をくれるし、一緒にいて心地よい時間を過ごせる。それでも、何かが違う。俺の心の中で、まだ彼女が占めている大きな部分があって、どうしてもそれを埋めることができなかった。

新しい彼女と過ごす時間が増えるほど、俺の心はますます苦しくなっていった。彼女に申し訳ないと思う気持ちと、忘れられない過去の狭間で、自分がどうするべきなのか分からなくなった。

結局、俺はその子と別れることにした。新しい彼女を傷つけてしまったことが申し訳なくて、でもどうしても彼女を想い続けることはできなかった。彼女には、もっと俺以外の幸せが待っていると信じたかったし、俺自身も、彼女との関係を続けることで誰も幸せにはなれないと感じていた。

それでも、俺の心はまだあの子を追いかけている。別れを告げられたあの日から、何も変わらないまま時だけが過ぎていった。俺は彼女を忘れることができなかった。

10/24/2024, 1:15:14 PM