「届かぬ思い」
こう聞いて、お前はどう思うのか?
___俺は、昔の仲間を思い出す。
これは、10年位前、小学生の時だった……。
あの時、先生の言った言葉…。
『こっちだ!!こっちに避難しろ!!』
あの日、大地震が起きた。
津波から避難する時、俺は最後尾。
恐らく存在感が無かったから、先生も先に行っちまったんだろう。
俺は、分かれ道の時。皆とは、別の所を選んだ。
その先は山。___大人は熊だなんだ、気にしてたのかも知れねえ。
無我夢中で走った。皆を探して走った。
たどり着いたのは山頂。皆の居る塔を見下ろせる。
俺は、上から下の悲鳴、阿鼻叫喚を聞いていた。
その中に、仲良しの人も……
何度も叫んだ。喉が枯れるまで叫んだ。
俺が居るということだけでも、気づいて欲しかった。
____その声は、雑音となり消えた。
自然の猛攻が終わった後。
下には死骸とガラクタと引っこ抜けた植物しか見えない。
あぁ、これからどうしようか。辺りは草、木、雨風を凌げそうな穴ぐらいしかない。
幸いにも、果物とかはあったからどうにかなった。
___あの時の、仲間達の苦しそうな声。
____今も、目の前に居るように感じる。
__居るん、だろ……?なぁ……。
『届かぬ思い』
4/15/2023, 12:23:51 PM