悪役令嬢

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『海の底』

オーホッホッホ!
私に歯向かう輩はみーんな
海の底に沈めてやりますわ!
さあ、お覚悟はよろしくて?

かつてはそんな殊勝な発言をしていたこの私が、
まさか海の底に沈められるなんて
思ってもみませんでしたわ。

「悪役令嬢」から「海の藻屑」に
クラスチェンジとは…。
なんたる不覚!なんたる屈辱!

そうして海の底を彷徨っていますと、
珊瑚で作られた不気味な館を見つけました。

私は警戒しつつも、恐る恐る中へ入ってみると、
そこには見知った顔の輩がおりました。

「これはこれはお嬢様、随分と変わり果てた
お姿になられましたね」

私のこの無様な姿を見て笑うその者は「魔術師」
怪しい魔術や魔法アイテムを生み出しては、
世に流通させる超危険人物ですわ!

「先日買っていただいた
『魔法の鏡』はいかがでしたか?」
私に怪しい商品を売りつけてきたあの
胡散臭い商人の正体はこいつでしたか!

私が苦情を申し立てれば、魔術師はやれやれと
いったご様子で肩をすくめました。
まったく一挙一動が腹立たしいですわね。

「哀れなお嬢様に免じて今回は魔法アイテム
『コンティニューボタン』を差し上げましょう。
お代は結構ですよ。これからもどうぞご贔屓に」

そういって魔術師は紫色の目を細めて
妖しげに微笑みました。

こうして私は奇跡的に暗く冷たい海の底から
陸地へと無事、生還する事ができました。

地上へ戻るとセバスチャンがふわふわの
タオルと温かい紅茶が入った魔法瓶を
抱えながら出迎えてくれましたわ。

主人の帰りを健気に待つとはなんて
よくできた執事でしょう。

私はセバスチャンからいただいた
紅茶を飲みながら、
今回の失態について振り返っていました。

あの魔術師に借りを作ってしまったのは
痛手ですが、またこうして悪役令嬢に
戻れたのなら結果オーライですわ!
さあ、屋敷に戻りますわよ、セバスチャン

1/20/2024, 12:07:18 PM