愛颯らのね

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お題 七夕


今日は七夕。

私は大好きな彼氏のまさくんと一緒に七夕祭りに来ているの!

七夕祭りでは、織姫と彦星のお話の読み聞かせがあった。

私はあんまりお話を知らなかったから興味津々だったの。
でもまさくんはどこか暗い顔をしてた。

少し悲しいお話でもあるからかな?

「まさくん。私たちはずっと一緒だから大丈夫だよ?」
まさくんは、笑ってくれると思って言った。
でも、まさくんはより一層悲しそうな顔をしたの。

どうしよう。おかしなこと言っちゃったかな。

「…あ、あっちで短冊書けるよ?行こ!」
少し強引だったけど、
まさくんの暗い顔は見てたくなかったから。


「すごーい!いっぱい書かれてるね!私達も書こ?」
『…こんなもの、書いてもしょうがないよ。』
え??
「まさくん?どうしたの?大丈夫?」
『ごめん。いいよ。書こ。』

ほんとにどうしたんだろう。
私のこと嫌いになっちゃったかな。
いやいや。あのまさくんが私のこと嫌いになるなんて
ありえないよね。でも、

私は短冊に[まさくんと一生一緒にいられますように]
って書いた。
まさくんは、ペンを持ってぼーっとしている。
「まさくんは何書くの?」
『…どうしようね。』

そういった彼の目には少し感情の雫が見えた。

「まさくん!?どうしたの?体調悪い?」

『ごめん。言わなきゃいけないことがある。』

心にぽっかり穴が気がした。

──雅人side─

今日は七夕。
俺は、ずっと彼女に隠してることがある。
そしてそれを今日、彼女に言おうと思う。

七夕の話を聞いてる時、俺は羨ましいと思った。
年に1回“も”会えるなんて。

そんなことを考えていたせいで君に心配をかけてしまった。
“ずっと一緒だよ”という言葉を言ってくれた君。
申し訳なさに落ち込む俺。

君はこんな俺にも優しくて、話題を変えてくれる。

それでも今日は日が悪い。

君は短冊を書きに行った。
しかも[まさくんと一生一緒にいられますように]
なんて可愛くて、嬉しいことを。
一生一緒!と幸せを分かちあっていたのはいつの事だっけ。
そんな思い出も、今の俺には残酷な記憶としか
思えなかった。

短冊に願い事を書いたところで叶わないことなんて
わかっている。
俺の願いは、短冊に頼むには大きすぎる。

それでも思いつくのはこの願いだけ。

そしてこれを書くには、この秘密を君に話さないといけない

俺の余命が、あと、半年もないということを。


───────────────────────────というあの日から僕の願っている世界を書き終えて
ふっと息を吐く。
君は生きて、僕が死ぬ世界。

あの日、3年前の七夕の日。
君は僕に泣きながら“あと半年で私は死ぬ”
といった。
結局彼女はそれから1年、半年も長く生きた。

それでもたった半年。
一生を誓った僕たちにはあまりにも短すぎる時間だった。
僕は、君を幸せにできただろうか。

そんなことを思いながら、3年前と同じお祭りに行って
一人で短冊を書く。
[彼女が今も、感じた幸せを覚えてくれていますように。]
傍から見たらおかしな文かもしれない。
それでも今の願いはこれしか無かった。

今日は七夕。
年に一度、君に逢える日。




7/7/2024, 12:47:33 PM