最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家は、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔一家の自宅にして、神社参拝者の宿坊にもなっており、
なにより今は、人外用の避難所。
台風接近中の伊豆諸島から、忘れられた神社の御神体だの一族の宝物だのを背負って、
主に稲荷神社に奉仕する人外どもが、身を寄せて、台風通過を待っておったのでした。
ぶっちゃけ、避難してきた子供たちの半数は、台風なんて理解していません。
お父さん狐やら、お母さんタヌキやら、おばあちゃんネズミやらに「本土へ行きますよ」と、「2泊3日の予定ですよ」と言われて来たのです。
で、22号台風をやり過ごそうと思ったら23号まで発生からの通過らしいので
まさかの2泊3日が6泊7日、または7泊8日。
皆みんな、人外子供は互いを覚えて、グループを作って、頭の良い人外は勉強など教え始めて、
「向こうに帰っても忘れないよ」などと、言い始めるモノも居る始末でした。
ところで今回のお題は「未知の交差点」です。
ある日、人外子供たちの2グループほどが、
一緒にお餅だのジャーキーだの持ち寄って、戦隊アニメ、管理局戦隊アドミンジャーを視聴中、
「部屋の半分を貸してくれ。20分で良い」
「失礼するよ。少し騒ぐけど、怖いおばちゃんおじちゃんじゃないから、許してくれ」
「んーまっ!おばちゃんなんて!訂正なさい」
なんということでしょう、
どこからどう見てもアドミンジャーの隊員にしか見えない大人が普通のどこかの制服スーツを来て
子どもたちが占領する大部屋に入ってきたのです!
「あどみんじゃだ!」
「ホンモノだ!ホンモノだ!」
「アドミンブルーだよ!隊長もいる!」
「あどみんじゃ、あどみんじゃ!」
「レッドー!」
昔々、リアル世界に住む人間がゲーム世界やアニメ世界を訪問するというジャンルがあり、それを「トリップもの」とよく言いましたが、
まさか令和の現代に、アニメの登場人物が具現化!
なんてハナシでもなく、
普通に、別の世界に実在する組織、別の世界に実在する人物等々の、設定やら組織名やらを変えて戦隊モノのアニメに改変しただけのこと。
ちゃんとお仕事しとるのです。
元々は、世界線管理局なる組織だそうです。
現代に生きる人外子供と、
別世界で仕事しておる管理局員。
まったく未知の組み合わせ、未知の交差点です。
未知の交差点、なのです。
「航路管理部からの情報は?どうなってるの?」
「まだ未確定らしいが、複数の航路上に、外部の手で未知の交差点が敷設されている可能性が、と」
「外部って、そんなの……」
「まぁ決まってますよね」
れっど!れっどぉ!
今まで戦隊アニメ、管理局戦隊アドミンジャーを観ておった人外子供たちは、テレビから一直線!
世界線管理局の局員さんに飛びつきます。
ねーねーヘンシンして!げんちゃくして!
アニメはクライマックスですが、もはや子供たちには関係ありません。
本物です。本物が、居るのです。
この奇跡の交差を放っとくワケにはいかぬのです!
「実害は?」
「一応、事故や事件『は』、未確認らしいです」
「いずれ出てくるわよね。特に事故」
「ですよね」
「そろそろワサビ茶などどうじゃ?」
「「結構です」」
「飲むのじゃ。ノムノジャ」
「「結構です」」
わーわー、きゃーきゃー!
2次元と3次元、人外と別世界人の交差です。
それからだいたい20分、特に何もハプニングは発生せず、別世界人のハナシがまとまったところで、
管理局員は部屋から、
出ていこうとしたのですが、戦隊ダイスキーの子狐子狸小鼠たちが、それぞれの推しにしがみついて、
当分、だいたい200mくらい、離れませんでしたとさ。 おしまい、おしまい。
10/12/2025, 7:04:50 AM