ラジオをかけていると、懐かしい音楽が流れた。
それは付き合う前に……いや、お互いを意識するきっかけになったダンスパーティーでかかった曲。ラストのチークダンスの時まで壁の花になっていた彼女を、仲の良かった青年が声をかけて踊った思い出の曲だった。
今は恋人同士になって、一緒に暮らしている。
「懐かしいね」
「はい、私も同じように思っていました」
青年はソファから立ち上がり、恋人に向けて手を差し伸べる。
「踊りませんか?」
「場所、狭いですよ?」
「テーブルを退かせば大丈夫だよ」
青年はテーブルを持ち上げて壁に添えて、座っていたソファも端に寄せる。
荷物が少ないから確かに小さく踊れそうだった。
「ね、踊ろ」
今度は彼女の手をしっかり取り、身体を引き寄せる。彼女を逃がす気はなさそうだった。
「はい」
ほんのりと頬を赤らめながら、彼女が青年に手を添えると音楽に合わせて身体を揺らした。
おわり
一四一、踊りませんか?
10/4/2024, 11:52:40 AM