ふうり

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太陽が沈み、月と町の明かりのみが光を放つ時間。
3人の高校生達が、路地裏を走っていた。

「居たぞ、あそこだ!」

オレンジ髪の少年が、前に走っている存在を指差す。

「確かに…あいつで…間違いありませんわね。」

お嬢様口調の少女が、息を切らしながら喋る。

「ふふっ…か弱きお嬢様は、もうギブアップかな?」

キザっぽい少年が、少女を煽る。

「ま、まだまだですわ!あいつを倒すまで、私は止まりませんわよ!」
「お前ら、張り合ってる場合じゃないだろ!
ルーナ、魔法で足止め!」
「ええ、任せなさい!はぁぁぁ!」

ルーナが走りながら、虚空から杖を出す。
漆黒の杖の上に、キラキラと光る緑色の宝石が付いていた。
力を込め、杖を追っている存在に向ける。
すると、風の壁が突如出来上がり、道を塞ぐ。
追われてた存在は、立ち止まり、こちらの方に振り返る。
月光に照らされ、姿が明らかとなる。
それは、漆黒を身に纏っていた、人型の何かだった。
足止めのおかげで、3人組はその存在に追いつく。

「ルーナありがとう!
もう逃げられないぞ、化け物!」

化け物は唸り声をあげ、威嚇し始める。
ヤマアラシのように、背中から棘を出す。

「ほう?これが君の能力か…流石化け物…腕がなるじゃないか」
「ちょっと幽夜(ゆうや)、関心している場合じゃないですわ。さっさと倒しますわよ」

ルーナが呆れたように言う
幽夜は、いつのまにか手に短剣を持って、構えていた。
刃までも、漆黒に染まっている、短剣が月夜に照らされる。

「ということで、敵に情けは無用!
倒させてもらう!」

少年もレイピアを虚空から取り出し、化け物に攻撃を仕掛ける。
漆黒に染まった持ち手に、対をなすような白い刃が輝いている。
それに反抗するように、化け物は背中の針を放出し攻撃する。

少年は、それをレイピアで払いのけるが、それで手一杯のようだ。
ルーナは、風を吹かせ、針の勢いを弱める。

「幽夜!今だ!」
「勿論、分かっているさ!」

幽夜が化け物の懐に潜り込む。
首と思われる位置を、横に斬り払う。
頭と胴体が分かれ、頭がごとんと鈍い音をして落ちる。

戦闘終了 そう思い、ルーナとレイピアの少年はほっと息をつく。

「これで終わりですわね 案外拍子抜けでしたわ」
「…いや、まだ終わりじゃないよ」
「え?」

幽夜が短剣を構える
その瞬間、残った胴体のあらゆる場所から針が発射される。
幽夜が、目にも見えない動きで、その棘を全て払いのけた。
流石の動きに、2人はびっくりして動けなかった。

胴体だけになった化け物が、ゆっくりと立ち上がる。
落ちていた頭が溶け、首からにょきにょきと頭が生えてくる。

幽夜は化け物に近づき、攻撃を仕掛ける。
しかし、化け物がその攻撃を防ぐ。

「なかなかやるね…なら 僕と一曲、踊らないかい?」

カッコつけた言葉を言ったその瞬間、化け物と幽夜の真剣勝負が始まった。
2人が援護しようにも、出来ない。
入り込む隙が無いのだ
その2人は、まるで踊っているかのように、かろやかに戦っていた。
一つの芸術と言っても、過言では無い。

激しい攻防の末、またもや化け物の首がごとんと落ちる。
そして、化け物の体がサイコロステーキのように、バラバラになり、そして霧になって消えた。
今度こそ、戦闘終了だ。

「幽夜!大丈夫だったか!」
「あぁ、問題ないさ。2人とも、油断しすぎだよ。
今度から気をつけてくれ」
「た、確かにそうだけれど…貴方、無茶しすぎですわ!
私達を、もっと頼ってくださいまし!」

ルーナがぷんぷんと怒る

「それはすまなかった 僕1人でも倒せると思ってね」
「確かにお前は強いが、ルーナの言う通り無茶は禁物だ。俺たちも居るんだからな。」

少年が、幽夜の肩に手を置く。

「…ありがとう勝(しょう)君」
「さて、そろそろ帰りますわよ。3人揃って寝不足だと、優花に怪しまれますわ。」

スカートについた埃を払いながら、呼びかける。

「そうだな。じゃあ2人とも、帰ろうか。」
「あぁ、帰ろうか。」

3人の高校生達が、月光に照らされながら帰路に着く。
大切な友人に、本当の事を明かさぬまま。

お題『踊りませんか?』

10/4/2023, 11:40:29 AM